あの日ぼくらが信じた物
 みっちゃんはしずしずと奥まった部屋に入って行き、枕元のスタンドランプをともして布団に潜り込んだ。


「あきらくん、来て」

「みみみっちゃん!」



───────



 それからぼくらはどうにかこうにかコトを終え、ぼくの腕の中にはみっちゃんが居る。


「あきらくん……」

「ごめん、みっちゃん。ぼく……」

「いいのよ。あきらくんが私の中に溢れているのが解って、幸せだったもの」

「でも痛かったでしょ? 血だって出ちゃったし」

「ううん。あきらくんとひとつになれた証だもの。愛しい痛みだわ」


 初めてのそれはなんだか嵐のように過ぎ去って、気持ちが良かったかどうかも思い出せない。

 少しするとぼくは、腕の中の柔らかくて堪らなく愛しいものに、また激しく欲情してしまっていた。


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