あの日ぼくらが信じた物
「あきらくん。わたしの部屋に行かない?」


 丁度最後の栗かのこをお茶で流し込んだ時に、みっちゃんはぼくに囁いた。


「ねぇ、いいでしょ? ママ」


 ままままっ、ママだ! そうだよこのウチで母ちゃんは絶対無いよ!


「じゃあ後は若い2人でお話でも、ごゆっくり」


 母の冗談は全くもって『母ちゃん』のそれである。ぼくはそんな恥ずかしさも手伝って、二つ返事でみっちゃんの提案に賛成した。


「階段が広いねっ!」


 上り下りの為だけに作られた、人もすれ違えないようなうちの狭い急階段に慣れているぼくは、これがまるでホテルのラウンジへと繋がる階段のように思えた。


「そうかな。バンクーバーに居た時は、もっと広いおうちだったから」

「え? 鈴木さんは外国に住んでたの?」


 バンクーバーと言えばハンバーガー発祥の地、いやバームクーヘンかな? (どっちも違う!)当時の拙い知識では把握し切れない程の、遠い遠い異国の地だった。


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