あの日ぼくらが信じた物
「ええっ? ホントに?」


 いつもだったら負け試合でも最後まで観ている癖に、何故だか今日はチャンネルを譲ってくれた。

ぼくはこの時期(つまりナイターがテレビで放映される時期)に決まって見れなくなる歌謡番組にチャンネルを合わせると、「みんなが替え歌で歌っていたのはこの曲か」なんて発見をしていた。


「あきら」


「ううん?」


 いつもみたいに「テレビに近寄り過ぎだ」と注意されるんだと思って、ぼくは座布団ごと後ずさりしている。


「いや、夏休みに入ったらな」


 違ったみたいだ。


「夏休みに入ったらすぐ、鈴木さん所とバーベキューに行くからな」


「なんで?」


 それで理由が解った。父達は子供同士の間を取り持とうと、思案してくれていたんだ。


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