あの日ぼくらが信じた物
 その明るいけれど、青空のかけらも覗いていない曇り空をつん裂いて、カラスが1羽横切る。


「あのカラス速い」


 ぼくは誰に聞かせるつもりも無くそう呟いていた。

一回転して戻って来たカラスは、視界の丁度真ん中で電線に止まる。


「いいよなぁ、おまえらは。自由に飛べてさ」


 するとカラスが毛づくろいをピタリとやめて顔を上げた。

心なしか、じっとこっちを見ているみたいだ。


「いいよなぁ、おまえらは。勉強出来てさ」


「なっ、なにぃいっ?」


 叫びながら椅子を蹴飛ばし立ち上がったぼくに、みんなの視線が集中する。


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