あの日ぼくらが信じた物
「え゙っうえっ……ひくっひっく、あきだぐぅん」


「ほらみっちゃん。鼻垂れてるぞっ!」


 ぼくはみっちゃんの頭をかかえて顔をゴシゴシと拭いてやった。


「やだぁ、恥ずかしいっ。私も持ってるわよぉ」


 顔中を真っ赤にして自分のハンカチを出すみっちゃん。


「ああっ!」


 急に吹き抜けた風に飛ばされたハンカチは、ハラリと川面に落ちた。


「誕生日に……パパがくれたやつなのに……」


 折角泣き止んだのに、また大きな瞳が涙でいっぱいになっていく。


「よしみっちゃん。ぼくに任せとけ!」


「駄目よあきらくん。服が濡れちゃう」


「ズボンは代えを持ってきたから大丈夫さ!」


 ぼくは急いで川に入り、ハンカチを追いかけた。


< 57 / 236 >

この作品をシェア

pagetop