あの日ぼくらが信じた物
「はっはっはっ。馬鹿だなあきらは」


「いや、ほんとに有り難うあきら君。光代の為に悪かったね」


「ヘェェックショイ! おお、寒っ」


 結局。みっちゃんのハンカチは拾えたものの、川底の苔で滑ったぼくは全身びしょ濡れになった。

ズボン以外に着替えを持って来て無かったからノーパンでズボンをはき、タオルを被って震えていた。



つい10分前───────



「わぁっ!」



  バシャァァァン



「あきらくんっ!」


 後少しで手が届くという所で転んでしまったぼくは、ハンカチを見失わないように慌てて立ち上がった。けれどヤブで怪我をしないようにと着せられた長袖のシャツが、水を含んで身体にまとわり付く。


「クソッ! どこだっ」


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