あの日ぼくらが信じた物
 危うく沈みかけているハンカチを見付けたけど、歩いていたのでは間に合わない。


「クソッ! 待てっ!」


 ぼくにはそのハンカチがみっちゃんとの最後の架け橋に思えた。


「ここであれを掴めなかったらみっちゃんとの仲は終わってしまう」


 そう思った瞬間、ぼくは思い切って飛び込んでいた。ハンカチを掴んで「やった!」と思ったのも束の間、深みを流れる速い水流にさらわれて、かなり長い間川岸にたどり着けなかったんだ。

溺れはしなかったものの、冷たい川の水にすっかり体温を奪われたまま車の場所まで歩いたので、すっかり唇は青くなり、身体の震えが止まらなくなっていた。


「ゴメンねあきらくん。ホントに有り難う」


 もう何回聞いたか解らない位みっちゃんはぼくに謝っていた。いいって言ってるのに。


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