あの日ぼくらが信じた物
 でもそんな努力の甲斐も有って、みっちゃんとはまるでこれまでのことが嘘のようにすっかり仲直り出来た。

 ぼくはその時、大袈裟だけど『森の精霊達』の存在を実感していた。彼らが背中を押してくれたから、ぼくは勇気を出せたんだ。



昼食時───────



 ずぶ濡れだったシャツも粗方乾き、冷えた身体も元通りになったので、父から買って貰ったトラックボールでみっちゃんと遊んでいた。


「あ、父ちゃんだ」


 川上から父がひとりで、そして心なしか、トボトボと歩いてくる。


「あれ? なんで父ちゃんひとりなの? みっちゃんパパは?」


「そ、それが鈴木さんなぁ……」


 父はその表情を曇らせ、口ごもる。


「えっ? パパがどうかしたんですか?」


 ピンク色に上気させていた顔色がサッと青ざめ、みっちゃんは父に駆け寄った。


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