あの日ぼくらが信じた物
「私、ピアノが有るからもう帰らなきゃ。じゃ、また明日学校でねっ」


 小さくなっていく後ろ姿を見送った後も、ぼくは暫くその場を動く事が出来なかった。



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「……ら、あきら!」


 ん? ぼくは眠ってたのか?


「なにボサーッとしてんのよ。ご飯が冷めちゃうわよ?」


 今日はぼくの大好きなキンメの甘味噌漬けだ。早く食べなきゃ。


「お前、兄弟居なくて良かったなぁ。これが父ちゃん家だったら今の時点でキンメは無くなってるな」


 父の兄弟は上ひとり下3人の5人兄弟。しかもみんな男だったから食事の時は戦争みたいだったらしい。


「あきら。学校で何か有ったの? ウチに帰ってくるなりずうっとこんな感じなのよ? 父ちゃん」


「ふん。どうしたもんかなぁ。誰か好きな子でも出来たか?」


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