あの日ぼくらが信じた物
 時に大人は、余りのタイミングで不用意な発言をする。


「ウグッ……ゲホッ ガホッ」


 味噌汁を吹き出すのを必死に堪えたぼくは、気管にそれが入った所為で派手に咳込んでいた。


「なんだ図星かぁあきら。俺はてっきりみっちゃんが好きなんだと思ってたのにな」


「ガハッ、みっ……ゴハッ……ゲッ」


 ぼくの咳込みようを見兼ねて母が口を挟む。


「ああ、解った解った。落ち着いてから喋りなさい。折角作ったご飯をアゲられたら堪んないわ?」


 そうだ。ぼくは確かにみっちゃんの事を誰よりも可愛いと思っている。

 これって『好き』って事だったんだ!


「好き……」


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