あの日ぼくらが信じた物
 ぼくは努めて平静を装って挨拶を交わした。

今度は前に感じた罪悪感よりももっと重い物だったのに、つい今朝の事だったので折り合いの付けようが無かったんだ。

 何よりあれは、ぼくが寝ている時に起こった事だ。意識の無い中罪を犯しても無罪なんだよな、そうさ。

 ぼくは何だか『後戻り出来ないゆえの潔さ』みたいな『毒喰らわば皿まで』っていうヤケクソ気味の気持ちになっていた。


「ねぇあきらくん」


「ん、うん?」


「あの事は内緒よ? 私たちの秘密」


 秘密……なんてくすぐったい言葉なんだろう。そりゃそうだ。口と口でキスしたなんて誰かに知られたら、上へ下への大騒ぎになる。先生に迄バレたなら、親だって呼び出されてしまうかも知れない。


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