彼の瞳に独占されています
せっかくだからどこかへ出掛けようかと提案され、最初からがっつりデートは緊張するよ……と、尻込みしていた私。

しかし、彼に『水族館にでも行く?』と言われたら、手の平を返してすぐにOKしてしまった。

私は昔から水族館が大好きなのだ。薄暗くて、たくさんの魚達が泳いでいるあの空間は、すごく癒されるから。



三日はあっという間に過ぎ、当日を迎えた。今日は私が住むアパートの近くの駅まで、永瀬さんが車で迎えに来てくれることになっている。

ファッションは、あまり気合いを入れすぎない、ゆるっとしたマキシワンピを選んでみた。大丈夫かな……と、何を心配しているのかわからないけどちょっと不安。


午後二時、ドキドキしながらバス停の横で待っていると、有名な海外メーカーの高級感漂う車が静かに停まる。そこから現れたのは、カットソーに黒のチノパンという、シンプルだけど大人っぽい私服姿の彼。

期待を裏切らずカッコいい……! スーツフェチの私だけど、当然センスの良いファッションにもときめいてしまう。

永瀬さんは車を回り、いつも通りの笑みを見せて、彼に見惚れている私に近付く。


「お待たせ、萌ちゃん」

「もっ……!?」


とても自然に名前で呼ぶものだから、不意をつかれた私の口からは挨拶すら出てこない。

< 32 / 124 >

この作品をシェア

pagetop