彼の瞳に独占されています
「……ごめん。せっかくだけど、今そういう気分じゃな──」

『いや、これは強制だ。俺もうアパートのすぐ近くのコンビニにいるから、早く来い』

「えぇぇ!?」


なにそれ、結局行かなきゃいけないんじゃない!

いつになく強引な淳一は、『ズボン履いて、長袖の羽織るもの持ってこいよ』という、意味のわからない注文をして、勝手に電話を切ってしまった。


「何なのよ……」


スマホを見つめてため息を吐き出す。今は淳一に会いづらいから、休みでよかったと思っていたのに……。

仕方なく、言われた通りにスキニーパンツを履き、パーカーを取り出す。あと、一応ファンデーションくらいは……と思い、ぱぱっと塗って家を出た。


アパート近くのコンビニはひとつしかない。そこに向かっていくと、駐車場の脇で缶コーヒーを飲んでいる淳一を発見。

白いシャツに細身のチノパンを合わせた、爽やかな私服姿はこれまで何度も見ているけれど、なんだか今日は違った印象を受ける。

彼氏と初めてデートする時みたいな、胸がときめく感じ。

それは、彼の服のセンスが変わったとか、戦闘服を脱いだからではなく……私の気持ちが変わったせいなのだと思う。

小走りで駆け寄ると、淳一は穏やかな大型犬みたいな、安心感のある笑顔を見せた。

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