彼の瞳に独占されています
◆大事なのはリセットすること


淳一にくっついているのは、とても心地良かった。背中の温かさに、泣きそうになった。

自分の気持ちを嫌と言うほど再確認させられて、切なくもなったけれど、心のもやがいくぶんか晴れてスッキリしている。


一日だけの短い休暇を終えた私は、まずは弥生ちゃんとしっかり話し合って仲直りしよう!と、意を決して出社した。

ロッカールームで支度していると、ちょうど弥生ちゃんが入ってきて、私は挨拶もせずにガバッと頭を下げる。


「弥生ちゃん、ごめん!!」


頭を上げると、彼女は面食らったようにパチパチとまばたきしていた。

私は少し考えつつ、「いや、違うか……」と呟き、控えめな笑みを浮かべて続ける。


「……ありがとう。弥生ちゃんが怒ってくれたおかげで、私やっと自分の気持ちに正直になれた」


弥生ちゃんがぶつかってきてくれなかったら、私はこれからもずっと、薄っぺらい恋愛を繰り返していただろう。

本心を騙して逃げていたら、幸せにはなれない。

自分の想いにまっすぐ進んでも、幸せになれるわけではないけれど、嘘をついているよりは格好良いと思う。

そう考えさせてくれた彼女には、本当に感謝している。

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