彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)


震える怒りを抑えながら、無表情で歩く。

それで大体の奴が、私が泣くのを我慢してると思う。




「あの子、まだ泣かないのー?」

「さすがに泣てんじゃな~い?」

「泣きながら歩くって、目立ちすぎ~」

「目立ちたがり屋だよね~悲劇のヒロインぶってさ!」



(そんなわけあるか!)




グッとこぶしを握り締める。




(怒るのを我慢してるだけなんだよ、『俺』は!!)




口に出さず、心の中だけで男言葉を使う。

そこにいたのは、もう一人の『僕』。




(ホント、『菅原凛』の時って最悪・・・・!)



龍星軍4代目総長・凛道蓮(りんどうれん)あらため、菅原凛(すがわらりん)、15歳。

あゆみが丘学園1年A組所属の女子高生。

瑞希お兄ちゃんに知られたくない、恥ずかしい『私』である。





「やだ~菅原凛、今日も学校に来てるじゃん!?」

「かけは、あたしの勝ちね~ほら、1000円!」

「明日は、来ない方に500円かけよう~」




わざと、私に聞こえるように言う女子達の前を、無言をつらぬいて通過します。



え~ここまでの流れでお気づきでしょうが、私、いじめられっ子なんです。

入学当時は、こんなことありませんでした。

目立たず、地味で、真面目で、優等生をしてきた私が、どうしてこうなったかと言うと。

学校一のイケメンでクラスメートの飯塚アダムに「宿題うつさせて~」と頼まれ、渋々、お人好しキャラで見せていたらこうなりました。

実はそいつの彼女が、学校で一番逆らっちゃいけない美少女問題児・渕上月乃亜(ふつがみるのあ)だったのです。

渕上は美人だけど、心は汚いです。

ご両親は地元の有力者で、お金もあるのに、なぜかレディースの総長としてヤンキーしてるんですよ。

おかげで、いじめはクラスだけじゃなくて、学年を越えて学校中へと感染しました。

しかも渕上は、持ち前の財力演技力を使って担任の先生をだまし、私がいじめの自作自演をしているという現実まで作ってしまったのです。


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