彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)
私に無理やり言わせたところで、頬から手を離す獅子島さん。
その手は、何事もなかったかのように再びギアへと戻る。
(あうう・・・・ひどいめにあった・・・・!)
これというのも、追跡車が~~~!!
思ったより痛くなかった頬をさすりながら、ミラーで後ろを確認した。
にっくき尾行者はどこかと、目を凝らすが・・・
(・・・いない。)
見えたのは、私達とすれ違った大きな車だけ。
「獅子島さん、追ってきてませんよ!」
「ふむ・・・目視(もくし)では確認できんな・・・」
「大丈夫ですよ!さっきの運転についてこれるはずないです!」
(そうよ!さすがにこれならー!?)
「追いつけませんよ!」
(引き離したんじゃない!?)
勝利を確信して、眼鏡の先輩に言ったのだが。
ドドーン!!
「え!?」
期待を込めた声が、一瞬で台無しになる音。
「な、なに!?」
振り返るよりも早く、ミラーに背後の光景が映る。
「車が!?」
対向車線の車が、事故っていた。
煙の上がる中から、あの黒い車が飛び出してくる。
「し、獅子島さん、あれ!」
「チッ!素人を巻き込みやがって・・・下種が!」
ヤンキーらしく舌打ちする先輩に、不安が一気に押し寄せる。
「ど、どうしましょう、獅子島さん!?110番した方がいいですよね!?」
慌てて携帯を出す。
その時、周りがまぶしくなった。
「え!?なに!?」
「目くらまし目的だ。後ろから、ライトアップしてるんだけだ!」
「全然ロマンチックじゃないんですけど!?」
獅子島さんの言う通り、2つのライトがしっかりと輝いている。
「まぶしい!」
「凛道、携帯をしまえ!反射して目を傷めるぞ!?」
「そ、そうですけど、助けを呼ばないと~」
(というか、このライトなんか、光が強すぎるような・・・!)
そんな思いで観察して気づく。
どうして光を強く感じるのか。
「獅子島さん!黒い車との距離が近くなってます!」
「わかってるじゃないか?車間距離を詰める作戦に出たようだな・・・!」
振り返れば、真後ろにぴったりと車が張り付いていた。
窓ガラスは黒塗りで覆われ、運転手さえ見えない。