彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)



悪いことなんてしてない私に、渕上への謝罪を求めてくる教師達。

迷惑かけられてるのはこっちですけど?

丁寧に、真面目に、正直に言っても伝わらない言葉。



(この女も、そのつもりで声をかけてきたんだろうけど・・・!)




「菅原さん、本当は渕上さんにいじめられてるんじゃない?」

「え?」





そう思っていたから、後藤先生の質問に驚いた。

そんな私に、彼女は一瞬顔をしかめてから近付いてきた。



「やっぱりそうなのね・・・?」



小声で、周囲を気にするように聞いてくる。



「菅原さん、先生はあなたの味方よ?お願い、本当のことを教えて。」

「後藤先生・・・・」



相手の言葉に戸惑う。

それは善意の言葉なのか。




―そんなわけないわ、菅原さん。あなたの話と渕上さんの話は合わないわ―

―渕上さん、家柄もしっかりしてるし、間違ったことはしないよ―

―菅原さんの考えすぎよ。先生もついて行くから、渕上さんに謝りましょう?―




虚偽(きょぎ)の言葉なのか。



「先生、私お昼食べてないんです。」

「菅原さん?」

「売店で・・・・買わないと売り切れます。失礼します!」

「あ!菅原さん!」



後藤先生の手を振りほどいて、廊下を走る。




(今のは、彼女の言葉は――――――――――)




本心だったのだろうか?

私の味方と言うのは本当なの?

他の先生みたいに、味方をするふりをして、私に悪口を浴びせたりしないの?

正直に言うべきだった?



(いいえ、簡単に信じちゃダメ。)



今まで、真面目に対応してきて、全部だめになっている。

それを思えば、彼女が救いの糸だったのかわからない。



(様子を見よう。)



敵か味方か。

すぐに決める必要はない。




(用心深くなりすぎて、困ることはないもん。)




だから今は、何も言わない。

相手の出方をうかがえばいい。



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