彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)
(世界史の後藤先生・・・・これからは注意しておこう・・・・)
大きく息はいて立ち止まる。
人気のない第2理科実験室。
幽霊が出るという噂もあって、人はほとんど寄り付かないのだが。
「なんや、ツレない態度やのぉ~」
人間の声が響き、続けざまに第2理科実験室のドアが開く。
「うはははは!あれ、チャンスやったん違う?助けてもろうた方がよかったんちゃうかー?」
「見てたのか、ヤマト?」
呆れながら言えば、顔だけ覗かせた大柄な男子が笑う。
「あの姉ちゃん、わしんとこで世界史教えてる先生やで。面倒見ええらしいーで?」
「何で開いてるんだ?」
彼の質問に答えず、逆に聞いた。
普段はカギがかかっていてあかない第二理科実験室。
午後から、使う学年もいないのに今は開いてる。
「そら、この鍵つこーて、開けたんや。」
自慢げに語る彼の手には、銀色カギがあった。
「共用の物を、私的に持ち歩くのはよくないですよ?」
「うははっは!オリジナルちゃうねん!これは合鍵やで、『総長』―?」
「よけい悪いだろう!『俺』のことも、『総長』と呼ぶな!」
現れた大男に、何度目かになるかわからない注意をする。
これによく知る相手が笑う。
「なんや、おかしいのぅ~!あの最強暴走族の4代目総長である凛道蓮君が、学校では気弱な女の子を演じるとはのぉ~?」
「しかたないでしょう!成り行きなんですから!あと、『僕』が演じてるのは凛道蓮の方だ!」
「うはははは!凛も難儀(なんぎ)やのぉー?伝説の暴走族を引き継いだだけでも、えらいこっちゃなのに、ヤンキーと無縁の真面目っ子が最強総長や!」
そう言って、のん気に笑っているのが、同じ龍星軍メンバーの五十嵐大和(ごじゅうあらし やまと)です。
この世の中で、私が凛道蓮=菅原凛だと知っている唯一の人物。
彼は、私が通う『あゆみが丘学園』に転校してきた1年生で、クラスはG組です。
見た目が2メートルもあって、黒くて長い前髪をカチューシャでとめてます。
常に笑っていて・・・声が大きくて陽気なので、最近では1年生『ラジオ』とあだ名もついてます。
〔★一度しゃべると止まらない★〕