彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)
元副総長が消えたところで、瑞希お兄ちゃんが言った。
「悪いな、凛。」
「い、いえ、いいです。実際、まだ酔いがさめてませんので、長湯してもらった方がいいです。」
(というか、そうしてくれた方が、長く瑞希お兄ちゃんの膝枕をしてもらえる・・・!)
「優しいな、凛は?」
笑顔で腹黒いことを考えていれば、苦笑いしながら瑞希お兄ちゃんは言う。
「あれでも、あいつ・・・・反省はしてるから。」
「え?何に対してです?」
「凛を巻き込んだことよ。誰が追っかけてきたか、凛も気になると思うが・・・今回は何も聞かないでくれ。」
「・・・瑞希お兄ちゃんがそう言うなら・・・聞きませんが・・・・」
そう答えたけど、気になったので聞いた。
「今でもあるんですか?龍星軍時代のお礼参りは・・・?」
「時々な。」
私の問いに、悪戯がばれた子供のように笑う。
「ヤンキーなんざ、暇な奴が多いからよ。ちょっとでも、普通になってる奴がいたら、ちょっかいかけたくなるんだよ。」
「迷惑ですね!真面目に頑張ってるところを邪魔するなんて!」
「それはちょっと違うかな。」
ぷんすかと怒る私に、軽く首を振ってから好きな人は言った。
「普通の奴を『0』とすれば、俺らヤンキーは『マイナス』なんだよ。」
「マイナス?」
「出来て当たり前のことが出来なかった。出来なきゃいけないルールを、守らないでいた。それが引退して、大人になってから、普通にやってきた奴らと『同じに出来るようになった』んだ。偉くもなんもねぇし、褒める意味がない。出来てなかったんだからな。」
「瑞希お兄ちゃん・・・」
「逆に、今ごろまともになれたのかよっていうのが、世間の評価だ。」
そう語る彼の言葉を痛く感じる。
「でも・・・お兄ちゃん、そんなに悪いことしてないよ?庄倉や尾村、蛇塚みたいなことしてないよ?」
「道路交通法違反はやりまくってる。ツッパリだ、硬派だって言っても、不良には変わりねぇ。ホントは凛にも・・・俺の跡は継がせちゃいけなかったんだけどな・・・」
「後悔・・・してるみたいな言い方ですね?」
「ははは!調子いいだろう?凛が良い子過ぎるからいけないんだぜー?社会のルール破らせちまってからさ~俺、悪いお兄ちゃんだ。」
「変わりませんよ。」
「あ?」
苦笑いする彼に、私は言った。