イケメン伯爵の契約結婚事情

フリードは唇をかみしめた。

叔父の言うことは、間違いなわけでもない。確かに父は、いい領主ではなかったろう。
自分も毛嫌いしていた時期があったし、従者に裏切られるということは、それだけの価値しかなかったのだろう。

でも。


「だからと言って、殺すことなどないはずだ」

「私は守りたいだけだ。彼女と、我が子を」


アルベルトが、フリードをまっすぐ見つめる。


「お前のように、正しい生まれの者には分からんよ。俺だって領主の血を引いていることには変わりない。なのに、あのばばあは俺を認めようとしなかった。……俺は、復讐したかったんだ。フリードの子など産ませない。血族が全ていなくなったところで、ようやくあの婆は俺に頭を下げる。俺はそのときに見せてやるんだ。彼女の子を。唯一、この領土を継げる血を持つ少年を」


いつもの落ち着いた口調が崩れ、興奮したように高笑いをあげるアルベルトに、フリードはぞっとした。ひとしきり笑い終えると、アルベルトは充血した目でフリードをとらえ、笑いかける。


「……だから、お前の子を産みたいなどと言われると困るんだ。アデーレが死んだのはそういう理由だよ。子を作らないという条件で嫁に推挙したのにあっさりと乗り換えようとするなど無責任な女だ」

「叔父上」

「エミーリア嬢も邪魔だな。お前があれだけ寵愛してるんだ。まだ懐妊の話は聞かないが、時間の問題だろう」

「まさか、エミーリアにもなにか?」

「さあ。今頃大騒ぎになっているかもしれないな。そのうちに伝令がやってくるだろう」

「ふざけるな! エミーリアに何をした」


フリードが思いきり立ち上がる。テーブルが揺れ、カップの紅茶が少しこぼれた。
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