イケメン伯爵の契約結婚事情
「……叔父上は、最初から俺も殺す気だったのか?」
「なんだと?」
アルベルトが眉を上げ、いぶかしげな顔をする。
「このハチミツ、……毒はこれだろう。だとすれば、加工品が高額で取引されているのも納得できる」
小さな舌打ちが聞こえたのと同時、騒がしい物音がする。
「フリード様、大変です。エミーリア様が」
ディルクの叫びに、フリードの血の気が一気に下がった。
エミーリアが倒れたという知らせなのだとしたら、倒れてからすでに二時間以上は経過しているはずだ。戻る時間を考えれば、一刻も早く解毒剤を手に入れなければいけない。
「叔父上、解毒剤を渡してください」
「取引だといったはずだ。念書におこしてもらおう。そうすればこれは渡す」
「いいから、渡せ! エミーリアに何かあったら俺は!」
ひらりと身をかわすアルベルトをフリードは焦りを抱えたまま追いかける。
毒で倒れた前妻、そしてメラニー。その姿にエミーリアを重ねたところを想像して、ぞっとする。
以前とは違う。
冷静でなどいられない。
こんなことでエミーリアを失ったらもう今までの自分ではいられない。
「早くよこせ」
アルベルトの胸倉につかみかかったそのとき、馬のいななきとともに聞きなれた声が聞こえた。
「……フリード!」
その声に引き寄せられるように、フリードはアルベルトを離し、外に出た。