イケメン伯爵の契約結婚事情
それにしても、とエミーリアは前を歩くカテリーナを見つめる。
アルベルトは確か、妻は人嫌いだと言ってはいなかったか。
しかし、この朗らかさや、急な来客への対応力を見るに、人嫌いだとはとても思えない。
「うちの茶畑でとれたお茶をご馳走するわね。ノーラ、料理長に言ってすぐにできるお菓子を用意してもらって」
エミーリアは、侍女に指示を出すカテリーナの背中に語り掛ける。会話して、彼女の人となりを見極めたかった。
「お構いなさらないでください。私、クレムラート領に嫁いできて初めて、お花にこんなに種類があることを知ったんです。農園で育てているというのを聞いて、是非に見たいと無理を言ってしまったんですわ。急にお邪魔したら困らせると分かっていたのにすみません」
「まあ。フリード様も可愛らしい奥様にはかなわないのね。仕方ないわ。夫には内緒でほんの少しだけよ。あとでエグモントに案内させるわね。まあお茶を用意する間、ゆっくりなさって」
予想外にあっさりと了承してもらえたことにエミーリアは疑問を感じる。
「ちょっと失礼するわね」
と、カテリーナが召使に指示を出すためにか部屋を出ると、フリードは立ち上がり窓辺に寄った。
同時に、まるで前から打ち合わせていたように、ディルクとトマスは出入り口に立ち辺りを警戒する。
「叔母上が戻ってきたらすぐ教えろよ」
そう言うと、フリードはエミーリアを手招きする。
その窓からは大きく広がる畑と、囲いがされた温室がいくつか見えた。