イケメン伯爵の契約結婚事情
「フリード様、見せつけにきたのかしら。こんな美しい奥様をもらって浮かれるのは分かるけど、外では控えてくださいな」
「これは叔母上、失礼しました」
髪は離したものの、フリードの手は今度はエミーリアの腰に回る。
「そうは言ってもね。俺はエミーリアをみんなに見せたいのですよ。ご覧ください、この綺麗な髪ときめ細かい肌を」
「ちょ、フリード」
すり寄ってくる夫は完全に色ボケしたように映るだろう。
カテリーナを油断させるためなのだろうとは思うけれど、エミーリアにとっては心臓に悪い。
「まあ、仲がよろしいのは結構ですけど。エミーリア様が困っていらっしゃるわよ。とても内気なお嬢さんとお聞きしたのだけど」
「は、はい。や、えと。……フリード、やめて」
素で真っ赤になったエミーリアが彼を押しのけると、フリードは満足そうにくつくつと笑った。
「こういうところも俺にとっては可愛いのですけどね。……ところで叔母上。腕をどうかなさいましたか? 失礼ですが室内で手袋をつけるのは暑くはないのかと」
「え? ああ。平気よ。ちょっとケガをしてしまったので、保護しているの。それよりどうぞ。今焼き立てが出来上がったのよ」
侍女がテーブルに出したクッキーやお茶を、フリードはエミーリアより先に口にする。
「うん。美味い。エミーリアも頂くといい」
促され、エミーリアも口にする。サクッとしていた甘いクッキーだ。紅茶とよく合っている。