イケメン伯爵の契約結婚事情

「フリード様、見せつけにきたのかしら。こんな美しい奥様をもらって浮かれるのは分かるけど、外では控えてくださいな」

「これは叔母上、失礼しました」


髪は離したものの、フリードの手は今度はエミーリアの腰に回る。


「そうは言ってもね。俺はエミーリアをみんなに見せたいのですよ。ご覧ください、この綺麗な髪ときめ細かい肌を」

「ちょ、フリード」


すり寄ってくる夫は完全に色ボケしたように映るだろう。
カテリーナを油断させるためなのだろうとは思うけれど、エミーリアにとっては心臓に悪い。


「まあ、仲がよろしいのは結構ですけど。エミーリア様が困っていらっしゃるわよ。とても内気なお嬢さんとお聞きしたのだけど」

「は、はい。や、えと。……フリード、やめて」


素で真っ赤になったエミーリアが彼を押しのけると、フリードは満足そうにくつくつと笑った。


「こういうところも俺にとっては可愛いのですけどね。……ところで叔母上。腕をどうかなさいましたか? 失礼ですが室内で手袋をつけるのは暑くはないのかと」

「え? ああ。平気よ。ちょっとケガをしてしまったので、保護しているの。それよりどうぞ。今焼き立てが出来上がったのよ」


侍女がテーブルに出したクッキーやお茶を、フリードはエミーリアより先に口にする。


「うん。美味い。エミーリアも頂くといい」


促され、エミーリアも口にする。サクッとしていた甘いクッキーだ。紅茶とよく合っている。

< 91 / 175 >

この作品をシェア

pagetop