イケメン伯爵の契約結婚事情
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そこから後はめまぐるしく過ぎた。
フリードは荷物の大半をトマスとディルクに渡し、エミーリアを乗せて黒馬を飛ばした。
屋敷まで水分補給の休憩のみで二時間。さすがの黒馬も息を荒げ、すっかり疲労したようだ。
エミーリアはそんな馬の首をそっと撫で、フリードと顔を見合わせてから、屋敷内へと飛び込んだ。
「これは、フリード様」
アルベルト付の従者が驚いた様子で出迎える。
「急にお帰りになるなど……。ご連絡の一つくらい……」
「エミーリアの侍女が倒れたと聞いた。状況は?」
「とりあえず中へ」
フリードに続いて中に入ると、相変わらずの花の香りが出迎える。
「侍女は落ち着いたようです。屋敷の者からは順番に話を聞いていたところですよ。ご一緒なさいますか」
見ると、厨房の面々は一列にならばされている。
エミーリアも一度厨房に潜り込んだ時に顔を合わせている人ばかりだ。カールもその中におり、カタカタと身を震わせている。
(でも、カールがそんなことするはずがない)
確信めいた気持ちでそう思ったが、先にメラニーの姿を見たかった。
「そうだな。エミーリア、どうする?」
「まずはメラニーの元に行きます」
「じゃあ俺もそうしよう」
促され、ふたりはメラニーが休まされているという一階の使用人用の部屋に駆け込んだ。