イケメン伯爵の契約結婚事情
「メラニー!」
枕元にいた医師が顔をあげる。メラニーは青い顔でベッドに横たわっていた。
「これは……奥様」
「メラニーは無事なの? いったい何が起こったの?」
「食事中に倒れたということです。食べたものはすべて吐き出し、痙攣、不整脈の症状が出ました。昨晩が山かと思いましたが、今朝がた落ち着いてきました。この後急変しなければ回復すると思います」
「食事中? ……毒?」
食事中に倒れる、というのはフリードの前妻の時と似ている。
ただ、メラニーが狙われる理由は分からなかった。
「正直なんとも言えませんね。食事に使った材料はみんな確認しましたが毒性のあるものはない。同じ食事をとった使用人の誰一人として、その症状は出ていません」
「おう吐物は調べたのか?」
フリードが眉を寄せながら考え込む仕草をする。
「これは若旦那様。ええ。でも厨房で確認した食材以外のものはパッと見、見当たりませんでしたよ。……あの時と同じです」
だから毒とは断言できない、と医師は伝えている。
そのとき、メラニーが小さく呻いた。エミーリアは彼女の顔がよく見えるところに陣取った。
「メラニー、私が分かる?」
「……お、く、……まあ、ご旅行は?」
「旅行よりメラニーが大事よ」
「まあ、すみ、ません。……私は大丈夫ですから」
笑って見せようとして、力が入らないのか、メラニーは大きく息をつく。