奏 〜Fantasia for piano〜
でも第二楽章に入ると、急にテンポが緩やかで、ゆったりと情感あふれる曲調に変わる。
心に染み入るような、哀愁漂う旋律に、うっとりと聴き入りながら考える。
これなら弾けそう。
全楽章弾くのは時間的に無理だろうし、第二楽章だけならいいかもしれない。
全三楽章、十三分の曲が終わると、マスターがCDのボリュームを下げて、私に言う。
「フルートソナタとしては、この曲が二十世紀の最高傑作と言われてるんだよ。
特に第二楽章は評価が高い。音楽祭でやるなら、第二楽章がいいよ」
私とマスターの結論が一致する。
梨奈もきっと気に入ってくれると思う。
後は……奏。
「奏、この曲弾いたことある?」と聞くと、洗い物の手を休めずに「ある」とひと言、返事をくれた。
よかった。これで決まりだ。
すぐにマスターが楽譜をダウンロードして、プリントしてくれた。
「ありがとうございます!
あ、お金……この楽譜、いくらですか?」
「いいよ、プレゼント」
「で、でも」
「その代わり、完成したらフルートの子も連れてきて聴かせてよ。楽しみだな〜。それと、香月くんが……」