奏 〜Fantasia for piano〜

でも第二楽章に入ると、急にテンポが緩やかで、ゆったりと情感あふれる曲調に変わる。

心に染み入るような、哀愁漂う旋律に、うっとりと聴き入りながら考える。

これなら弾けそう。

全楽章弾くのは時間的に無理だろうし、第二楽章だけならいいかもしれない。


全三楽章、十三分の曲が終わると、マスターがCDのボリュームを下げて、私に言う。


「フルートソナタとしては、この曲が二十世紀の最高傑作と言われてるんだよ。
特に第二楽章は評価が高い。音楽祭でやるなら、第二楽章がいいよ」


私とマスターの結論が一致する。

梨奈もきっと気に入ってくれると思う。

後は……奏。

「奏、この曲弾いたことある?」と聞くと、洗い物の手を休めずに「ある」とひと言、返事をくれた。


よかった。これで決まりだ。

すぐにマスターが楽譜をダウンロードして、プリントしてくれた。


「ありがとうございます!
あ、お金……この楽譜、いくらですか?」

「いいよ、プレゼント」

「で、でも」

「その代わり、完成したらフルートの子も連れてきて聴かせてよ。楽しみだな〜。それと、香月くんが……」


< 173 / 264 >

この作品をシェア

pagetop