奏 〜Fantasia for piano〜
間違いすぎて、奏の表情が徐々に強張っていく。
腕組みをして冷めた目で見下ろされ、漂う空気は真冬のようだ。
おかしいな……。
私のシナリオでは『よく練習してきたね』と褒められ、『ここはこう弾いたほうがいいよ』と優しく言われて、奏がお手本を披露するはずだったのに。
鬼教官にしごかれる出来損ないの生徒の気分で、必死にピアノを弾く私。
そこに奏の厳しい指摘が、バシバシ飛んでくる。
「違う。スラーが付いてるだろ。音切らないで」
「その小節は唯一第三楽章の最後に繋がる部分だから、もっと緊張感のある音で」
お昼休みはあっという間に過ぎていく。
いつの間にか梨奈は吹くのをやめていて、離れた位置でお握りを食べ始め、大変だねと言いたげな顔して私を見守っていた。
私もお腹空いたのに……。
チラリと時計を見ると、昼休みは後十分もない。
ダメ出しされるフレーズを少しずつ変えて弾いても、奏の険しい表情は解けず、ついには「全然ダメ」とまで言われてしまった。
「綾はプーランクがどういう人物なのか分かってない。彼は粋な都会人だったんだよ。そんな田舎くさく弾かないで」
「えっと、じゃあこんな感じ?」