奏 〜Fantasia for piano〜
六分ほどの演奏を終えると、マスターが立ち上がり「ブラボー!」と叫んだ。
他のおじさん達も拍手して、口々に褒めてくれるのが、ちょっとくすぐったい気がする。
「綾!」と梨奈が抱きついてくる。
「私達、今、すごくなかった?」
「うん。なんかすごく気持ちよかったね」
友達と一緒にひとつの音楽を作り上げるのは、ピアノ独奏にはない楽しさだ。
アンサンブルって、素敵だね。ハーモニーって、気持ちいい……。
「さあ、次はおじさんトリオの出番だ」とマスターが言い、ケースからバイオリンを取り出した。
常連客のおじさんはクラリネットで、初めて会うおじさんはピアノの椅子に座った。
バイオリンとピアノのユニゾンから曲が始まり、すぐにクラリネットが加わって、軽快な三重奏が耳に心地いい。
すごく上手というわけじゃないけど、みんな楽しそうで、聴いている私もウキウキするような素敵な演奏だ。
私は梨奈と並んで、カウンター席に座って聴いている。
この曲は初めて聴く。
「なんて曲?」と小声で梨奈に聞いたら、首を傾げられた。