恋のルール教えて下さい ~憧れの課長と大人の恋~
後に人の気配がしたと思ったら、
「おい」と低くて遠慮のない声がした。
膨らんだ期待が、しゅんとしぼんだ。
何だ、佐野君か。
びっくりした。
「佐野さん、わざわざご苦労様です」
美沙ちゃんが軽く頭を下げて、佐野君に挨拶してる。
なんで、ここまでやってくるの?
彼に、毒づくとこじゃないか。
来てくれて助かったんだもの。
「村西、ちょっと来い」
佐野君は、腕組みして私を見下ろしている。
やっぱり、態度は変わっていなかった。相変わらず上から目線。
私が逃げ出すより先に、無愛想な佐野君が行く手を阻むように立っている。
「来い?って。な、なんでですかねえ?
わ、私、この通り、まだ作業が残ってますから……」
この際、仕事だと言って拒否しよう。
私は、机の隅をしっかりつかんで、佐野君に連れ去られないようにしがみつく。
佐野君が、私の肩にべたっと両手を置いた。
な、何するの?
彼の大きな手が、肩から腕を撫でまわす。
「ひっ」止めて、そんなふうにしつこく触ったりしないで。
お願い、止めて。
ぞくぞくっとして体が硬直する。
佐野君はなんなく、私を机から引き離した。
「悪いな。俺も午後から出なきゃけないから。今すぐ来てくれる?」
冗談は止めて下さい。
何度、仕事の邪魔するんですか?
なんて、言えないけど。