恋のルール教えて下さい ~憧れの課長と大人の恋~





「村西さん、ちょっといいかな」



いい気持だったのに。



誰だ、邪魔するのは。



ん?


ぬっと黒い影が延びて来た。

手元が暗い。どうしたのかな。

蛍光灯、切れたかな?

庶務に行ってこよう。すぐに取り換えてもらわなきゃ。

良く見えないから、作業が進まない。

私は、天井を見上げた。



「やあ」

暗くなったのは、蛍光灯が切れたせいではなかった。

「えっと……」人がいる。

なんで?

「村西っておまえだろう?ファイル有難うな。ちょっと話があるんだけど」


佐野君の不機嫌な顔が、私を見下ろしていた。

「そう……」うわっ、ミスった。

「ごめん、ちょっと待ってて」

ミス直さないと……

「待てねえ。これ以上一分だってな」

怒り心頭。超絶不機嫌。

彼は、すぐにでも私を絞め殺したいという目で睨みつけてきた。

「佐野君、戻ったんだ」出来るだけ愛想よく笑う。

「ホントだよな。帰ってそうそうこんなめんどくさい事言い出しやがって」



佐野君は、私の頭上に影のように覆っている。

態度も威圧的だし、目は驚くほど冷たい。

佐野君って、大学までスポーツやってたんだっけ?

真っ黒な短い髪に、整髪料の香りがする。

フットワークが軽く、忍者のように音を立てないけど。

背後から近づかれても、その整髪料で彼だってわかる。

いつもは、近くに来たらわかるのに、油断した。


細身だけど結構しっかりした体をしてる。

何のスポーツやってたのか知らないけど。

スポーツマンシップに乗っ取って、ルールを守るのは基本でしょう?

なんて、百年たっても言えないけど。


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