ロストマーブルズ
 二人は気がつかなかったが、周りに居た女生徒たちはこそこそ何かを話しながら二人を見ていた。

 ジョーイは学校では知られた存在であり、女生徒の憧れの対象となっている。

 女性に興味のないいつもクールな表情のジョーイが、どこかぎこちなく照れて歩いている姿は、その日のニュースになりそうなくらい注目を浴びていた。

 憧れていた女生徒達が穏やかに居られるはずがなかった。

 しかし、彼女達はどうすることもできず、ジョーイの隣に居るキノに羨望の眼差しを向けていた。
 でも一人だけ、果敢に立ち向かうように堂々と入り込む輩がいた。

「ジョーイ、おはよう」

 ジョーイとキノの間に割り込むようにリルが入って来た。

 リルはキノを一睨みする。

 邪魔が入ったことにジョーイは穏やかではなくなったが、邪険にもできなかった。

「おはよう、リル」

「ジョーイ、どうしてキノと一緒に歩いているの?」

「どうしてって、偶然電車で一緒になったからさ。別に俺が誰と一緒に歩こうがいいじゃないか」

「いい事ない!」

「お、おい、リル」

 叫んだ声の大きさにも驚いたが、思いっきり否定の言葉が返ってきてジョーイはひるんでいた。

「ジョーイを取られたくない」

 リルはきつい目をキノに向けた。

 あからさまに嫉妬心をむき出しにするリルに、ジョーイは言葉を失ってしまう。

 しかし、キノはリルの感情にあたかも楽しむように笑って答えていた。
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