ロストマーブルズ
「いや、何でもないこっちのこと」

「あっ、車がどっかに行くよ。白鷺先生もこっちに向かって歩いてくる。どうするジョーイ?」

「どうするも、何も」

 ジョーイは近づいてきた眞子の前に、いきなりすくっと立ち上がった。

「きゃっ! いやだ、ジョーイじゃない。先生を脅かすのはやめてよ。びっくりするじゃない」

「先生、今の男と何を話してたんですか?」

「えっ、どうしたの急に」

「いいから、俺の質問に答えて下さい!」

「ちょっとある生徒のことで質問されただけよ」

「それはキノのことですか」

 眞子は一瞬声をつまらせた。

「一体なんなのよ。あなたには関係ないわ。とにかく教室に戻った方がいいわよ。休み時間もそろそろ終わりよ。私も次の授業があるから急いでるの」

 逃げるように去っていく眞子の後姿をジョーイはきつく睨んでいた。

「ねぇ、ジョーイ一体どうしたの?」

「いや、何でもないんだ」

 何かを思いつめたジョーイの表情に、キノへの思いを重ねてしまい、リルは悲しくなっていた。

 自分が入り込めない、入ってはいけないものを感じていた。
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