ロストマーブルズ
 電車が自分の駅に着いたとき、ジョーイはトニーが先に改札口を出るのを確認してから、少し間を置いて自分も改札口を出る。

 そして電話の内容を盗み聞きしてしまったことを忘れようと、首を横に数回振ってから駆け出した。

「おい、トニー。お前も今の電車だったのか?」
 白々しく聞こえる自分の声に冷や冷やしながら、ジョーイは声をかけた。

「なんだ、ジョーイ、まだ家に帰ってなかったのか。今まで何してたんだ」

「いや、ちょっと知り合いに会って一緒にコーヒー飲んでた」

 嘘もつけないと思って正直に言ったが、正直に言い過ぎてもトニーの好奇心はかわせない。

 案の定、相手は女かとか、普段そんなことしない癖に何があったなどとしつこく聞かれて、詩織と初めて出会った前日の話やキノの痴漢撃退のこと、そして詩織に偶然出会って聞いたキノの話のことを全て話す羽目になった。

「ほんとか。キノって次から次へと不思議な行動してくれるもんだな。やはりあれは計算されたことなんだろうか。それにしてもジョーイがそんな行動を起こすのも珍しいじゃないか。他にもなんかきっかけになったことがあるんじゃないの?」

 まさにまだアスカの記憶のことがあったが、それは誰にも言うつもりはなかった。
 しかし、トニーは洞察力が鋭い。
 ジョーイはそれを交わすために話をコンビニ事件に戻した。

「そんなことよりも、とにかく、やっぱり昨日のコンビニ事件は偶然じゃなかったってことだよ」

「そうだな、だったら今からコンビニの店長さんに直接話を聞きにいこうぜ。何かわかるかもしれない」

 二人の足はコンビニへと向かった。
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