伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
「でも、こうして、時々お会いになってるんですね。ライル様はこれからもお一人じゃないと分かって、安心しました」
クレアがそう言うと、アンドリューは鳶色の瞳をスッと細めて、こちらをじっと見据えてきた。
「変な風に聞こえるのは僕だけかな?」
「え?」
「一人じゃないのは当たり前だよ。これからは、あなたがいるんだから。……それとも、ライルのそばから離れるつもりなのかな?」
「あ……」
しまった、とクレアは焦った。アンドリューの話につい感情移入して、うっかり気を許してしまい、演じることを忘れてしまった。
「どうも、この前会った時、しっくりこなかったんだけど……。あなたはライルに対して壁を作ってしまっているように見える。どこかよそよそしいというか」
「……壁なんてありません……」
平然を装ったが、アンドリューには見透かされているようで、落ち着かない。
「無理やり、結婚を迫られてるの?」
「……違います……」
「じゃあ、ライルを愛してる?」
「……それは……」
言葉に詰まった。
考えてはいけないことだと、これまで自分に言い聞かせてきた。認めてしまったら……一度でも口に出してしまったら、もう元に戻れなくなってしまいそうだった。
母のように結局は成就しない結末に、自分も同じように傷付くのでは、と思うと怖い。
好きになってはいけない相手なのだ。
「……ライル様のことはとても尊敬していますし、お慕いしています」
クレアは言葉を選んでそう答えるのが、精一杯だった。
もしかしたら、アンドリューが今日ここに来たのはライルに会うためではなく、自分にその事を確かめるためだったのかもしれない。
クレアがそう言うと、アンドリューは鳶色の瞳をスッと細めて、こちらをじっと見据えてきた。
「変な風に聞こえるのは僕だけかな?」
「え?」
「一人じゃないのは当たり前だよ。これからは、あなたがいるんだから。……それとも、ライルのそばから離れるつもりなのかな?」
「あ……」
しまった、とクレアは焦った。アンドリューの話につい感情移入して、うっかり気を許してしまい、演じることを忘れてしまった。
「どうも、この前会った時、しっくりこなかったんだけど……。あなたはライルに対して壁を作ってしまっているように見える。どこかよそよそしいというか」
「……壁なんてありません……」
平然を装ったが、アンドリューには見透かされているようで、落ち着かない。
「無理やり、結婚を迫られてるの?」
「……違います……」
「じゃあ、ライルを愛してる?」
「……それは……」
言葉に詰まった。
考えてはいけないことだと、これまで自分に言い聞かせてきた。認めてしまったら……一度でも口に出してしまったら、もう元に戻れなくなってしまいそうだった。
母のように結局は成就しない結末に、自分も同じように傷付くのでは、と思うと怖い。
好きになってはいけない相手なのだ。
「……ライル様のことはとても尊敬していますし、お慕いしています」
クレアは言葉を選んでそう答えるのが、精一杯だった。
もしかしたら、アンドリューが今日ここに来たのはライルに会うためではなく、自分にその事を確かめるためだったのかもしれない。