伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
その反動で、持っていた図鑑が、バサリ、と音を立てて地面に落ちる。
慌てて拾おうとすると、もう片方の手を掴まれて阻止され、クレアは驚いてアンドリューの方を見た。
「僕だったら、婚約者にそんな顔させないのに」
視線と視線が交わる。
「え……?」
「初めて会った時からあなたのことが気になるんだ。ライルから奪ってしまいたいくらいに。あなたに惹かれてるんだ」
アンドリューは、クレアの帽子をそっと取ると、ベンチに置いた。クレアの長い髪が、微風に揺れる。アンドリューの顔が間近に迫った。
「仲が良いのは人前だけで、陰ではライルに不当に扱われてるとか?」
人前だけ、という言葉に一瞬、ドキリとする。
「あなたの心の支えになりたいんだ。僕を頼ってくれたら嬉しい。……もちろん、ライルには内緒で」
「な……にを……仰って……?」
それは、つまり、二人で秘密の関係を結ぼうということか。
信じられない、という風に、クレアは小さく首を横に振った。
「やめて下さい。何を根拠に、私が不当な扱いを受けていると仰るんですか?そんなこと、ありません。ライル様はいつも優しくして下さってます。ライル様がそんな冷たい方ではないことは、あなたが一番良くご存じのはずです」
何だかライルのことを悪く言われているような気がして、クレアは不愉快になり、強い意志を込めてアンドリューを見つめ返すと、彼はフッと笑った。
「何だ、さっきまで自信無さそうな顔をしてたから、少し揺さぶれば、と思ったのに、残念だな」
慌てて拾おうとすると、もう片方の手を掴まれて阻止され、クレアは驚いてアンドリューの方を見た。
「僕だったら、婚約者にそんな顔させないのに」
視線と視線が交わる。
「え……?」
「初めて会った時からあなたのことが気になるんだ。ライルから奪ってしまいたいくらいに。あなたに惹かれてるんだ」
アンドリューは、クレアの帽子をそっと取ると、ベンチに置いた。クレアの長い髪が、微風に揺れる。アンドリューの顔が間近に迫った。
「仲が良いのは人前だけで、陰ではライルに不当に扱われてるとか?」
人前だけ、という言葉に一瞬、ドキリとする。
「あなたの心の支えになりたいんだ。僕を頼ってくれたら嬉しい。……もちろん、ライルには内緒で」
「な……にを……仰って……?」
それは、つまり、二人で秘密の関係を結ぼうということか。
信じられない、という風に、クレアは小さく首を横に振った。
「やめて下さい。何を根拠に、私が不当な扱いを受けていると仰るんですか?そんなこと、ありません。ライル様はいつも優しくして下さってます。ライル様がそんな冷たい方ではないことは、あなたが一番良くご存じのはずです」
何だかライルのことを悪く言われているような気がして、クレアは不愉快になり、強い意志を込めてアンドリューを見つめ返すと、彼はフッと笑った。
「何だ、さっきまで自信無さそうな顔をしてたから、少し揺さぶれば、と思ったのに、残念だな」