伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
そう呟いて赤くなったクレアの頬に、すかさずライルがキスを落とした。不意打ちのような行為にクレアは思わず飛び上がりそうになり、その顔はさらに紅潮する。

「今からどこに行こうとしてたの?」

「……あの……少し外の空気を吸おうかと思いまして……」

「じゃあ、良かった。庭に一緒に行こう」

目の前に手が差し出され、クレアはライルを見上げた。

「え……?」

「ちょうどいい時間だし、今から一緒にティータイムにしよう。なかなか時間が合わなかったから、遅くなってしまったけど」

「あ……」

はっきりと約束したわけではないのに、ライルがそのことを覚えていてくれたことに、クレアの表現がパッと明るくなった。

「行きます……!」

ライルは満足そうに微笑み返すと、クレアの手を取って、自分の腕に絡ませた。






案内されたのは、庭のバラ園だった。赤、白、黄色などの色とりどりのバラが、陽の光を浴びてそれぞれ美しさを競うように、満開に咲いている。

「……良かった……まだ咲いてたんですね」

「そうだね。さあ、こっちだよ」

ライルに連れられてバラの垣根の小道を曲がった所で、クレアは「あっ」と小さく感嘆の声を上げた。

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