伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
クレアの視界が一気に開けた。

そこは広場のようになっていて、青い芝生の上には白い天幕が張られ、その下にテーブルと椅子が二脚、設置されていた。

そのそばで、ローランドとメイドが二人ほど待機しているのが見える。

鮮明な空の青さと天幕の白さの色の対比が、何とも言えず美しい。

ライルに促されて、クレアは真っ白なレース織りのクロスの敷かれたテーブルへと、歩みを進めた。ローランドに椅子を引いてもらい、席に座って辺りを見渡すと、このテーブルを中心にして、バラの花壇が周りをぐるりと囲っている。

ライルもその向かいに着席すると、ローランドが繊細な模様の美しい、白い陶磁器のティーカップに、最高品質の紅茶を注ぎ、二人の前に静かに置いた。

メイドがテーブルの真ん中に、スコーンやタルト、ケーキなとが盛られた銀の盆を置く。食べやすいように一口大に切ったサンドイッチも、別の皿で運ばれてきた。気付くとジュディは、さりげなく給仕の側に回って仕事をしている。

……そういえば、昨日からほとんど何も食べなかった……。

一度にこんなにたくさんの菓子を見るのは初めてでクレアが驚いていると、ライルが軽く片手を上げた。それを合図に、執事とメイド達はその場から退がっていった。

天幕の影で、午後の陽射しも眩しくない。クレアはティーカップにそっと口を付けると、ライルがじっとこちらを見つめていることに気付いた。

無意識で物欲しそうな顔をしてしまっていたのだろうか、とクレアは恥ずかしくなって、カップを持っていた手を下ろした。



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