伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
すると、ライルは翠緑の瞳に優しい色を浮かべて、微笑んだ。
「一緒にこんな時間を過ごせて嬉しいよ」
「私もです。こんなに綺麗なお庭の中で、夢みたいです……。ありがとうございます」
「正直言うとね、誘っても出てきてくれないかもしれない、と思っていたんだ。こんなことを言ったら気を悪くするかもしれないけど……その可能性の方が高いと思ってた。その時は無理強いせずにまた今度にしよう、と」
「……ご心配をお掛けして、申し訳ありません……」
「いいんだ。だから、俺が連れ出さなくても君が自分で部屋から出てきたのを見て、嬉しかった。君は俺が思っているより、強い女性なのかもしれないね」
「……強くは、ありません……。ただ……起きた時、母が亡くなった頃のことを思い出したんです」
「君のお母上の……?」
「はい」
先ほど、クレアはカーテン越しに部屋に入り込んできた陽光を瞼に感じ、目を覚ました。
……あ、いけない……っ、お店に行く日だったわ……!
慌てて起き上がったが、なぜか空洞のような虚無感を胸に抱えていることに気が付いた。
まだ回らない頭でその原因を探っていて……全てを思い出した。
……そうだった……もうお店は……。
悲しみが襲ってきて、しばらく動けずじっとしていたが、やがてよろめく足取りでドレッサーの前に立った。
鏡に映る自分の顔は血の気が無く、目は赤く腫れ上がっている。髪の毛はボサボサのままで、寝間着の白さばかりが際立って見えて、まるで幽霊のようだった。
……この姿……前にも見たことあるわ……。
「一緒にこんな時間を過ごせて嬉しいよ」
「私もです。こんなに綺麗なお庭の中で、夢みたいです……。ありがとうございます」
「正直言うとね、誘っても出てきてくれないかもしれない、と思っていたんだ。こんなことを言ったら気を悪くするかもしれないけど……その可能性の方が高いと思ってた。その時は無理強いせずにまた今度にしよう、と」
「……ご心配をお掛けして、申し訳ありません……」
「いいんだ。だから、俺が連れ出さなくても君が自分で部屋から出てきたのを見て、嬉しかった。君は俺が思っているより、強い女性なのかもしれないね」
「……強くは、ありません……。ただ……起きた時、母が亡くなった頃のことを思い出したんです」
「君のお母上の……?」
「はい」
先ほど、クレアはカーテン越しに部屋に入り込んできた陽光を瞼に感じ、目を覚ました。
……あ、いけない……っ、お店に行く日だったわ……!
慌てて起き上がったが、なぜか空洞のような虚無感を胸に抱えていることに気が付いた。
まだ回らない頭でその原因を探っていて……全てを思い出した。
……そうだった……もうお店は……。
悲しみが襲ってきて、しばらく動けずじっとしていたが、やがてよろめく足取りでドレッサーの前に立った。
鏡に映る自分の顔は血の気が無く、目は赤く腫れ上がっている。髪の毛はボサボサのままで、寝間着の白さばかりが際立って見えて、まるで幽霊のようだった。
……この姿……前にも見たことあるわ……。