伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
クレアは背筋を伸ばし、真っ直ぐ前を向いた。

「……ライル様、私、これからもお店を続けようと思います。母やこれまで支えてくれた人達のためにも……でも、何より自分のために、続けたいんです。修理代もかかるし、負債を抱えて大変なのは分かってます」

「……」

ライルはしばらくクレアの瞳をじっと見つめていたが、フッと微笑んだ。

「やっぱり君はすごいね」

「え……」

事業や経営のことに関しても、ライルの方が判断力が優れているのは確かだ。壊滅的な状況から、何をしてもあの店はもう駄目だとか、きっと辛辣な意見が飛んでくるだろうと腹をくくっていただけに、ライルの言葉は意外だった。

「そんな……すごくなんて、ないです……」

「君を応援したい」

「あ、ありがとうございます!」

「じゃあ、君が早く店を開けるように、修理代と負債の件は俺が持つことにしよう」

「……は……い?」

いきなりの申し出にクレアは戸惑い、目を見開いた。

「それは、ダメですっ……ライル様にご迷惑をおかけるするわけにはいきませんっ。ごめんなさい、私、そんなつもりで言ったんじゃないんですっ」

クレアは慌てて首をぶんぶんと横へ振った。ライルが実家へ生活援助金を渡したことを忘れたことはない。

「男の好意は素直に受け取ったらいい」

「でもっ……」

好意という一言で片付けられる額ではない。

すると、ライルは焦るクレアの表情を見て、ククッと喉の奥を小さく鳴らして笑った。

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