伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約

翌日の午前中、早速ライルは街一番の腕前の職人に、店の修理の依頼を出した。以前よりも強い材質のガラスに、扉も鍵も頑丈な造りに替えるということで、日数は早くても十日間は要するらしい。

「後で修理依頼の書類をローランドに持っていかせるよ。何か困ったことがあったら、彼に相談するといい」

朝食後、ライルはそう話すと、出掛けていった。


店に行けない間は、この屋敷で日中を過ごすことになる。

クレアは一昨日店から持ち帰った過去の売上表と発注書を箱から引っ張り出してきて、今後の商品を改めて見直して、決めていくことにした。

それと、店の損失の額をきちんと計上するためにライルが後日専門家を呼ぶと言ってくれていたが、その前にクレア自身も大体のことを把握しておきたくて、過去の仕入れ表にも目を通していく。

「そうされていると、旦那様と似ていらっしゃいますね」

修理書類に店主のサインが必要とのことで、クレアの部屋を訪れたローランドが穏やかに微笑みながら言った。

クレアは「え?」と顔を上げて周りに視線を向ける。そして、机の上に高く積まれた書類や伝票の束に自分が埋もれてしまっていることに、ようやく気付いた。

「そんな……ライル様と似てるなんて、おこがましいわ。ライル様の方がもっと大きなお仕事を抱えていらっしゃるんだし……それに何より、赤字じゃないもの」

クレアはローランドが持ってきた書類に目を通すとサインをして、フウ、と小さく息をついた。

< 148 / 248 >

この作品をシェア

pagetop