伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
すると、ライルはクレアの気配に気付き、顔を上げた。二人の視線が無言で交わる。ライルもクレアの姿に心を奪われたように、一瞬、目を見開いたが、すぐに形の良い唇に優美な微笑みを浮かべた。
そして、階段を上がってくると、あえてクレアの数段下で止まり、
「お手をどうぞ、お姫様」
と、クレアの前に--正確にはクレアの斜め下に、自分の手をスッと差し出した。
クレアがライルを見下ろす格好となる。いつもとは違う角度から、緑の瞳に見上げられて、クレアの胸がトクンと鳴った。
お姫様、などと呼ばれることなど、例え嘘でもこれまで一度も経験がない。珍しいこの姿を見て、ライルもただの戯れで言っているに違いない、とクレアは思ったが、王子様のような彼にそう言われると、素直に心が反応して、舞い上がってしまいそうなほど嬉しくなる。
クレアの伸ばした手を、ライルが下からそっとすくい上げた。エスコートされるように、ゆっくりと階段を下りる。
「行ってらっしゃいませ」
玄関ホールで執事とメイド達に見送られて、四頭立ての豪奢な馬車に二人は乗り込む。
ゆっくりと馬車が発進した。
そして、階段を上がってくると、あえてクレアの数段下で止まり、
「お手をどうぞ、お姫様」
と、クレアの前に--正確にはクレアの斜め下に、自分の手をスッと差し出した。
クレアがライルを見下ろす格好となる。いつもとは違う角度から、緑の瞳に見上げられて、クレアの胸がトクンと鳴った。
お姫様、などと呼ばれることなど、例え嘘でもこれまで一度も経験がない。珍しいこの姿を見て、ライルもただの戯れで言っているに違いない、とクレアは思ったが、王子様のような彼にそう言われると、素直に心が反応して、舞い上がってしまいそうなほど嬉しくなる。
クレアの伸ばした手を、ライルが下からそっとすくい上げた。エスコートされるように、ゆっくりと階段を下りる。
「行ってらっしゃいませ」
玄関ホールで執事とメイド達に見送られて、四頭立ての豪奢な馬車に二人は乗り込む。
ゆっくりと馬車が発進した。