伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
「申し訳ないのですが……今日は仕事から離れてクレアとの時間を優先にしたいのです。今から、帰るところでして」
ライルが丁重に断りの意志を示すと、ダーリング氏は、慌てて軽く頭を垂れた。
「ああ、いえいえ、これは大変失礼しました。お二人の邪魔をするような野暮を働いてしまったようで」
「いえ、こちらこそ申し訳ありません。後日、必ず伺いますので」
「あの、ライル様……」
その時、クレアがライルの袖を引いた。
「私のことはいいですから、お話をお聞きになって下さい」
「だけど……」
「お忙しいのに、また後から出向くとなると、大変でしょう? ライル様が私を気遣って下さっているのは分かっていますし、私も自分のせいでライル様を煩わせたくないんです。私、待ってますから」
クレアの言葉に、ライルは少し考えていたようだったが、すぐにダーリング氏の方を向いた。
「分かりました。お話を伺いましょう。少しこちらでお待ち頂けますか?」
ライルはそう言うと、クレアの手を取って、出口とは逆の方向へと進み出した。
「ライル様、どちらへ……?」
「叔父夫婦の所だよ。君を預ける」
「え、私なら一人でも大丈夫ですけど……?」
「だめだ。君を一人には出来ない。さっき、階段を下りる時、叔父達がまだ残っているのが見えた。この先にいるはずだ」
ライルの言った通り、クレアの前方に、他の観客と談笑しているイーストン子爵夫妻が見えた。
近付き、タイミングを見計らって、ライルが声を掛ける。
「叔父上」
「ああ、ライルか」と、子爵がゆっくり振り返る。
「アンドリューはいないのですか?」
「息子なら、あそこだよ」
子爵の視線の先に目をやると、数人の令嬢に囲まれて、楽しそうに話をしているアンドリューがいた。彼が、観劇より夜会の方が好きだと言った理由がクレアには分かる気がした。それに、いつもクレアの近くにいる異性が眩しすぎて、つい忘れてしまいがちになるが、アンドリューもライルに劣らず、人を充分惹き付ける容姿の持ち主なのだ。
ライルが丁重に断りの意志を示すと、ダーリング氏は、慌てて軽く頭を垂れた。
「ああ、いえいえ、これは大変失礼しました。お二人の邪魔をするような野暮を働いてしまったようで」
「いえ、こちらこそ申し訳ありません。後日、必ず伺いますので」
「あの、ライル様……」
その時、クレアがライルの袖を引いた。
「私のことはいいですから、お話をお聞きになって下さい」
「だけど……」
「お忙しいのに、また後から出向くとなると、大変でしょう? ライル様が私を気遣って下さっているのは分かっていますし、私も自分のせいでライル様を煩わせたくないんです。私、待ってますから」
クレアの言葉に、ライルは少し考えていたようだったが、すぐにダーリング氏の方を向いた。
「分かりました。お話を伺いましょう。少しこちらでお待ち頂けますか?」
ライルはそう言うと、クレアの手を取って、出口とは逆の方向へと進み出した。
「ライル様、どちらへ……?」
「叔父夫婦の所だよ。君を預ける」
「え、私なら一人でも大丈夫ですけど……?」
「だめだ。君を一人には出来ない。さっき、階段を下りる時、叔父達がまだ残っているのが見えた。この先にいるはずだ」
ライルの言った通り、クレアの前方に、他の観客と談笑しているイーストン子爵夫妻が見えた。
近付き、タイミングを見計らって、ライルが声を掛ける。
「叔父上」
「ああ、ライルか」と、子爵がゆっくり振り返る。
「アンドリューはいないのですか?」
「息子なら、あそこだよ」
子爵の視線の先に目をやると、数人の令嬢に囲まれて、楽しそうに話をしているアンドリューがいた。彼が、観劇より夜会の方が好きだと言った理由がクレアには分かる気がした。それに、いつもクレアの近くにいる異性が眩しすぎて、つい忘れてしまいがちになるが、アンドリューもライルに劣らず、人を充分惹き付ける容姿の持ち主なのだ。