伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
その後、ライルはダーリング氏と合流し、人混みの少ない一階通路の奥へと移動したが、ダーリング氏の言葉通り、話はすぐに終わった。
ダーリング氏も、三階の客席に家族を待たせているということで、二人はその場で別れた。
これならば、クレアをわざわざ叔父夫婦に預けなくても良かったかもな、と思いながら一人、通路を歩いていると--
ドンッ
突然、誰かがライルの背中にぶつかってきた。
それほどの衝撃ではなかったが、何事かと振り向く。
視界に入ったのは、まばゆいきらめきを放つ長い金髪。花柄模様の、ピンクのドレス。
「あ、ごめんなさい……」
青い瞳がライルを見上げる。
「……あなたは、確か……」
ライルはハッとして、呟いた声に少し驚きの色を滲ませた。
「た、助けて下さい……!」
その金髪の人物--ヴィヴィアンは焦ったように小さく叫ぶと、いきなりライルの腕に、ぎゅっとしがみついてきた。