伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
「ライル様は今、違う土壌で育った花が珍しいだけです。でも、いずれ飽きて後悔なさいますわ。それに、外に働きに出るなんて、貴族の妻になるという自覚がない証拠です。その店も、めちゃくちゃになってしまって……結局、ライル様に迷惑を掛けて、本当に恥ずかしい人」

ヴィヴィアンは呆れたように、ため息をついた。

「きっと、姉と関係のあった男性からの嫌がらせですわ。今回は店だけだったから良かったものの、次は姉に……いずれ、ライル様にも危害が及ぶのではないかと思うと、私、怖いんですの……」

「その事件には、私も驚かされました」

ライルがようやく口を開いた。ヴィヴィアンは、お気持ちお察しします、という風に、頷きながら微笑む。

「ですが、怪我人や死者が出たわけではなく、事態はすぐに収拾したので、新聞にも載っていませんでした。当然、世間的にも騒がれるような事件でもありません。それに、私と婚約して以降、クレアはアディンセル家の方々とは連絡を取っていない。それなのに--」

ライルの緑の瞳が、スッと、ヴィヴィアンを見据えた。




「なぜ、あなたがその事件を知っているのです?」



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