伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
クレアが目覚めたのは、自室のベッドの上だった。カーテンとカーテンの間から、秋の青空が見える。

……あれ……私、いつの間に……。

ドレスではなく、寝間着を着ている。視線を動かすと、ちょうど寝室に入ってきたジュディの姿をとらえた。

「ああ、クレア様……!」

駆け寄ってきて、クレアの手を握る。それだけで、クレアのことを心から心配してくれていたのだと分かった。

「……ジュディ、ごめんなさい……急にいなくなって……」

「いいえ、ご無事でよろしゅうございました……!」

「……私、どうやってここに……? それに、いつの間にか朝……?」

「今、ちょうど正午前です。昨日、旦那様とお帰りの際、馬車の中でお眠りになられたんですよ。最近、ずっとあまり眠れていないご様子でしたし、疲れが溜まっていらしたんですよ」

「……そんなに寝てたの……」

聞けば、ライルがベッドまで運び、メイド達が数人で着替えさせてくれたそうだ。

「クレア様、何か口にされますか?」

「……そうね……今はいいわ……」

その時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。ドアの向こうから、ローランドの声が聞こえる。

「クレア様にお客様がお見えです」

「え……?」

誰だか分からないが、とりあえず着替えるので待ってほしいと言うと、

「その必要は、ありませんよ。お見舞いに来たのですから」

聞き覚えのある声と共に、一人の貴婦人が中に入ってきた。

「……シルビア様……」

それは、シルビア・コールドウィンだった。

ジュディが慌てて椅子を用意する。クレアも驚いて、上体を起こし、ベッドから降りようとしたが、「そのままでいいわ」と、優しく制止された。そして、ジュディに、「すぐ帰るから、お茶は結構よ。少しの間、外して下さる?」と言った。

ジュディが部屋を後にし、クレアとシルビアの二人きりになった。


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