伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
「ずいぶん、楽しそうに話してたね」

シルビアが部屋を出るのと入れ替わりに、ライルがクレアの元にやって来た。

「ゆっくり話せた?」

「はい、ありがとうございます。お孫さんの話も……聞きました」

「そうか……」

ライルは少し寂しそうに微笑んだ。幼なじみの死を思い出したのかもしれない。

「あの、ライル様……本当にごめんなさい……。私の思い込みで、その……ライル様に怒ってしまって……」

「いいよ。君が俺の元に戻ってきてくれたから」

「ライル様……あの、私、大事なことを言わないといけなくて……」

「ん?」

クレアは顔を上げ、パールグレーの瞳を真っ直ぐにライルに向けた。





「結婚の話、お受けします。私をライル様の妻にして下さい」





ライルはこちらを見たまま、固まっている。

「あの……」

クレアは、少し不安になって、言葉を続けた。

「もちろん、このままではいけないのは分かってます。奥方としての教養や知識も身に付けないといけないし……きゃっ!」

話の途中でクレアはライルに急にベッドに押し倒され、驚いて声を上げた。

そのまま、唇を塞がれる。昼間にしては、少し濃厚過ぎる口付けを交わした後、やっとライルが唇を離した。

「ありがとう、クレア」

「ライル様……」

「絶対に幸せにする」

「今でも幸せですよ」

「じゃあ、もっとだよ」

二人で額を寄せて、笑い合う。

「ああ、それと、俺は反省したよ」

「え……?」

「俺が君をどれだけ愛してるか、伝わっていなかったから、君は俺から離れようとした。俺の伝え方が悪かったんだ」

そう言うと、ライルは上着を脱ぎ捨て、ネクタイを荒々しく取った。そして、シャツのボタンに手を掛ける。

「ラ、ライル様……何を……?」

不安を覚えたクレアが恐る恐る尋ねる。

「言葉で伝わらないなら、君の体に刻み込むしかない」

「え、ちょ、ちょっと……!」

「この前は優しくし過ぎたかもしれないね。もう少し、手加減無しでも……」

「ラ、ライル様!?」

ライルのはだけた胸元が少し見えて、クレアは
彼の本気に焦った。



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