伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
そういえば、ライル様はいつ爵位を継がれたのかしら……。

いつ頃、両親は亡くなったのか。

でも、自分から聞く気にはなれなかった。いつか、彼から話してくれるのを待つしかない。

「明日は朝から少し忙しいよ。疲れたと思うから、ゆっくり休むといい」

食後のお茶を飲み終わり、ライルが部屋まで送ってくれた。

入浴して、これまた可愛らしい寝着に着替え、ジュディに髪をブラッシングしてもらってから、ベッドに入った。







翌朝、いつも通り早く目が覚めた。

普段なら店に出る身支度を始めるのだが、今日まで休みにしておいた。

昼間は暖かくなったとはいえ、この国の春の朝はまだまだ肌寒い。上掛けを被ったまましばらくベッドでじっとしていると、ジュディがモーニングティーを用意してくれていた。

「ありがとう」

カップを受け取って口を付けると、温かい感覚が体の芯までじんわり行き届く。

いよいよ、今日から新しい生活が始まる。

今日は、裾に向かって徐々に青色が濃くなっていく、グラデーションの美しいドレスだった。着替え終わると、朝食を取るために食堂へと案内される。

ふと、昨日と違う場所に向かっていることに気付く。ジュディに尋ねると、昨日の場所は夕食用で、朝食と昼食用の食堂は別なのだという。これだけ広い屋敷なのだから、部屋数も多いことは納得だが、それにしても贅沢な造りだ。

「おはよう」

食堂に入るとライルが待っていた。

「おはようございます。……すみません、お待たせしてしまいましたか?」

「いいや、大丈夫。食事は一緒に取ると決めたからね」

「はい……」

ライルが昨夜の約束を守ろうとしてくれていることが、この上なく嬉しい。


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