伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
テーブルに焼きたてのパンが並ぶ。他にも、スクランブルエッグ、カリカリに焼いたベーコン、トマトなどの彩り野菜、と一品一品の量も多く、食欲をそそられる。

「よく眠れた?」とライルが尋ねる。

「はい、とっても。ベッドも広くてふかふかでしたし。今朝はちょっと冷えましたけど」

「体が冷えるのは良くないな。今晩から添い寝することにしよう」

あまりにも当たり前のような口調でライルが言うので、クレアは何のことか分からずパンを頬張ったままだった。

が、理解した瞬間、パンが喉につかえそうになり、慌てて近くにあったミルクを口に流し込む。

「な、ななな、何言って……!」

涙目になって、顔を真っ赤にしたクレアを見つめるライルの表情は楽しそうだ。

「冗談だよ。君は本当に可愛いね」

「……」

また、からかわれた……。この場合の可愛いは、面白い、だし……。だんだん分かってきたわ。

少し悔しいので、すねたように無言で卵を口に入れ、残りを食べ進めた。

でも、こんな風に誰かと会話しながら食事をするのは……ライルにはからかわれるけど、それでもやっぱり楽しいと思う。



朝食を終えると、次の予定が待っていた。

王都一と評判の、仕立屋がライルの依頼を受けてやってきて、クレアのドレスを作るために
採寸し、デザインと生地を決めていく。何着作るのかと聞いて、そのあまりの数の多さに、クレアは不安を募らせた。

「ライル様……こんなに作って大丈夫なんですか?……後で無駄になりません……?」

本当の婚約者じゃないのにここまでして頂くわけには……と思っていると、

「似合う服を着て俺の横に立つのも、仕事の内だよ」

と、 あっさり返答された。

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