伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
翌日、クレアは朝食を済ませると、普段の外出着に着替え、馬車に乗って店へと向かった。

店の前でジュディと別れ、中に入る。ここ数日、店を空けていたのでいたので、一通り掃除を終え、品物の確認作業をし、開店となる。

客の数もいつもとほぼ変わらず、やがて夕刻になり、店を閉めて朝と同じ場所に行くと、ブラッドフォード家の馬車が待っていた。

邸宅に帰り、急いで晩餐用のドレスに着替える。そして、ライルと共に食堂のテーブルに着く。

そんな様子で、あっという間に三日が過ぎた。

ライルには三日おきに店を休むという約束をしている。

そして、その休みの日。

クレアの『花嫁修行』ならぬ、『令嬢修行』が本格的に始まった。

ライルが三日おきに休むように言った真意は、これだったのだとクレアはこの時初めて気付いた。

午前中は、礼儀作法の家庭教師がやって来た。

立ち上がり方、歩き方などの立ち振舞いから始まり、お辞儀や挨拶の仕方、そして、テーブルマナー。

覚えることが沢山で目が回りそうになるが、これも与えられた仕事の内と自らに言い聞かせ、真剣に取り組む。

そして、昼食が終わると、今度はダンスの教師が来て、ホールでレッスンが始まる。

基礎からみっちり教え込まれ、数時間後、レッスンが終わった頃には、クレアの足は棒のようになり、倒れ込むように座った椅子から、しばらく動けそうにもなかった。

「クレア様、大丈夫ですか?」

ジュディが水差しとグラスを持って来た。それに水を注ぎ、クレアに手渡す。搾ったレモン汁が少し入っていて、さっぱりしておいしい。

「ありがとう。大丈夫……少し休むわ」


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