伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
「見られてもいいよ。だって、俺達は『そういう関係』なんだから。誰も変には思わないよ」

「……だけど……」

「恥ずかしかったら、俺の胸に顔を埋めてていいよ」

「……」

恥ずかしくて降りたいのに、浮遊感にも似たライルの腕の中が心地よくて、疲れ切ったこの体をこのまま抱き上げられていたい。

もう、自分でもどうしていいか分からず、クレアはライルの首に手を回したまま、彼の胸に額を当て、目を閉じてじっとしていた。

なので、その様子をライルが愛おしそうに見つめいたことに、クレアは気付かなかった。

クレアの部屋のドアを開けるため、ジュディは先回りしてホールを出ていった。

途中で使用人とすれ違ったかもしれない。でも目を開けられないので分からない。服越しにライルの体温を感じて、クレアの心臓が激しく鼓動した。

やがて自室に着くと、ソファーにそっと降ろされた。

「……ありがとうございます……」

見上げると、ライルの視線と交わる。

「夕食まで時間があるから、ゆっくり休むといいよ。俺も少し仕事があるから」

「はい……」

また後で、と言って一旦ドアに向かったライルだったが、

「ああ、忘れてた」

と、踵を返して戻ってきた。

そして、「何か落とされました?」と尋ねるクレアの横に座ると、彼女の顎を優しく掴んで上向かせ--

その唇に、自分のそれを重ねた。




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